生まれて初めて感じた衝撃

30代 女性

その瞬間、突然心臓がドックンドックンと大きく打ち始めたことを今でも忘れません……。
クリスマスシーズン。赤・黄・緑・金色・銀色の色とりどりの飾りに、キラキラと眩いイルミネーションの中、私は彼から小粒のダイヤで薔薇の花をデザインした指輪をプレゼントされて、幸せいっぱいの気分で彼と腕を組んで歩いていました。
その時、前から歩いて来る女性が連れていた真っ白いプードルが彼に向かって走りより、クーンクーンと甘えた声を上げたのです。彼女を見ると、彼女の眼はまっすぐ私を見ていました。その人は私と違ってスレンダーで綺麗な人でした。
彼は、硬直していました。私は「嫌いな犬になつかれて硬直している」と思っていました。

今思えばあの時の空気、彼女の視線、犬嫌いな彼になつくプードル、おかしいと感じることだらけだったのに、それに気が付かない程私は幼く、世間知らずで、彼に夢中だったのです。

クリスマスを境に彼と会う機会が減りました。
仕事が忙しいなら仕方がない、お正月はずっと彼と一緒に過ごせるのだからと自分に言い聞かせ、ある日の夕方寂しさを紛らわすためにショッピングに出かけました。
「そうだ、指輪のお返しにネクタイピンをプレゼントしよう!」とデパートへ。
買い物を終え駐車場に戻ると、隣の赤い車の中に見覚えのある白いプードルがいました。はじめは似ている犬かと思いましたが、首輪についているキラキラがあまりにも特徴的だったので、私は(あの時と同じ犬)だと確信、なんとなく嫌な予感がして私は車の中でぼんやりと考え事をしていました。
しばらくしてスレンダーな彼女がこちらへ歩いてくるのが見えました。そして彼女の隣にいるのはまぎれもない、私の彼でした。

私は驚いたと同時にとっさに隠れ、赤い車を見失わないように必死に追いかけると彼を乗せた車は洒落た造りの白い5階建てのマンションの地下駐車場に入っていきました。

幸せだった日々は一瞬で崩れ落ちました。
もうすぐプロポーズをしてくれると思っていた彼は、他の女性と浮気をしていたのです。
彼の仕事が相変わらず忙しいという理由で、私とのデートは先延ばしになっていました。私は彼に浮気の追及をできぬままモヤモヤとすごしていましたが、会えないさみしさと不安な気持ちいても立っても居られず、彼のマンションへ会いに行くことにしました。
しかし、その日彼は帰ってきませんでした。
私は彼が赤い車の彼女のところにいると直感しました。彼は犬は嫌いだと言っていたはずなのに……。
私は裏切られたショックで激やせ。家族はそんな私を黙って見守ってくれていました。

もともとぽっちゃりだった私は、失恋のショックのおかげで7キロも痩せることができました。どんなダイエットをしても痩せられなかったのに、リバウンドもなく自分でも分かるほどすっきりと痩せたのです。そしてすぐ、「彼よりもいい男」との出会いがありました。
ハンサムで優しくて、お金持ち・・・現在そんな彼と、可愛い犬と同居して楽しく暮らしています。

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